スピカ
 もし、人を色で表す事が出来たなら、楸さんは、冷たくて、どこか温かい、あの色だ。

スピカ。

あの、青白い、優しい色だろうな。

汚れを知っていて、それでも、真っ直ぐな色。楸さんの色。


濁った黒い瞳の奥にはいつも、真っ直ぐな光があった。冷白色の強くて優しい温もりが、星みたいにちらついて、こっちが真っ直ぐ見ていられなくなるほど、あたしを貫こうとしていた。




ねぇ、スピカ。

君は知ってた?


独りじゃない事。

ずっと傍にいる人が存在する事。


君が燃え尽きていく様を、自分が燃え尽きるまで見守っている人がいる事を。

きっと、ずっと。



あたしは、知らなかったよ。


君の、その強い眼の奥にいたのが、あたしだって事も。

冷たいその色が、あんなにも優しい色だったって事も。


全部全部、見ようとしていなかった。




ねぇ、スピカ。


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