スピカ
ふと視線を上げると、ニコニコしている森崎さんの顔が目に入った。優しさの滲み出た口元が、何とも言い難い。
こんな人と付き合えば、傷付かないで済むのかな。
怪しまれないよう即座に目を素麺へ移す。
川の流れみたいに、白線が歪な弧を描いている。と言うよりも、もはや弧でもない。木目みたいな不思議な模様。
ふいに、骨張った手が、するりと伸びて来た。すっかり素麺に目を吸い寄せられていたせいで、遅く気づいたあたしは、過剰にびくりと箸を揺らしてしまった。
「えっ」
驚きの目で手の主を見ると、今度は手の方が動きを止める。困ったように森崎さんは笑顔を作った。
「あ、ごめん! あの……ネギ付いてたから。口の端っこ」
「えっ?」
慌てて口元を押さえる。
そこには確かに異物があった。
「うわ、恥ずかしっ!」
皆がもくもくと素麺を食べる中、森崎さんは静かに頬を緩ませてくれた。
こんな人と付き合えば、傷付かないで済むのかな。
怪しまれないよう即座に目を素麺へ移す。
川の流れみたいに、白線が歪な弧を描いている。と言うよりも、もはや弧でもない。木目みたいな不思議な模様。
ふいに、骨張った手が、するりと伸びて来た。すっかり素麺に目を吸い寄せられていたせいで、遅く気づいたあたしは、過剰にびくりと箸を揺らしてしまった。
「えっ」
驚きの目で手の主を見ると、今度は手の方が動きを止める。困ったように森崎さんは笑顔を作った。
「あ、ごめん! あの……ネギ付いてたから。口の端っこ」
「えっ?」
慌てて口元を押さえる。
そこには確かに異物があった。
「うわ、恥ずかしっ!」
皆がもくもくと素麺を食べる中、森崎さんは静かに頬を緩ませてくれた。