スピカ
「俺、文化祭行くから」

「え、来んの?」

「嫌?」

「ううん、そういう意味じゃない」

ただ単に驚いただけだ。
“行くから”って事は、決まってたんだ。

ああ、悠成君に誘われてたのかな。

「クラスどこ?」

「あたしは、3年2組」

「分かった。行くよ」

行く、って……。

「悠成君は4組だよ?」

え?と視線が向けられた。
くりっとした目がどこかあどけない。だけど、その反応の真意が分からなくて、あたしもきっと同じような表情をしていただろう。
洋君は、吐息混じりに小さく笑った。

「何で、そこで悠成が出て来んの?」

何を言ってるんだ、この人は。
だって、と言おうとすると、洋君に遮られてしまった。

「雅ちゃんに用があるんだけど」

あ、と思った。
体温が上がっていくのを止められなくて。
こんなにも自然に、好きだとアピールされたのは、初めてだった。当たり前の事のようにそう言うものだから、どうしても戸惑ってしまう。
その辺にいるチャラ男とは一味も二味も違う。さすがプリンス。

「そっか、……分かった」

我ながら素っ気ない返事。
あたしが男だったら、こんな女、絶対に嫌だ。
思っていなくとも、もっと「嬉しい!」とか何とか、気の利いた事を言えたら良いのに。

それなのに、満足気に笑ってくれる。


……変だ、そんなの。

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