スピカ
「え、良平って、あのストーカー野郎?」

真ん丸の目が更に見開く。開いた口から、さっき含んだばかりのコーラが今にも零れてしまいそう。

「亞未、汚い」

あ、と言いながら慌てて紙ナプキンで口元を押さえる。亞未は小さく咳ばらいをすると、もう1度あたしに視線を向けた。

「好きな女が出来たんだって。本当か知らないけど」

「有り得ねぇー。何なの、あいつ! あんだけ散々、雅の事追っ掛け回しておいて」

細い眉が顰まると同時に、少し枯れた声が店内に響く。
長時間カラオケに行ったせいで、2人共声がガラガラだ。キツイ口調が更にキツく聞こえる。

「許せないよ」

正直、良平もむかつくと言えばむかつく。

だけど、亞未がそう怒ってくれるだけであたしは安心してしまう。ああ、あたしにはちゃんと味方がいるんだ、って。

「いいよ、もう。関わりたくない」

吐き捨てるようにそう呟き、ストローを口に運ぶ。レモンスカッシュの味が枯れた喉を刺激して、じんと痛んだ。
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