スピカ

「……うるさい。あんまりジロジロ見ないで下さいよ」

「そ、そうじゃなくて」

そうじゃなくて、何だよ。どうせ、「派手だね」って言いたいんでしょ。

「……だから呼びたくなかったのに」

「違う。だから、何か、綺麗で……」

余りに不意を突かれたものだから、予想外に身体が反応してしまう。
こんなの、楸さんにとっては安っぽい口説き文句でしかないのに。
どうして、顔が赤くなっていくのだろう。熱を冷まそうにも、自分でどうこう出来るものじゃなくて。

「あ、」

「……あ?」

「……ありがと」

そう呟くしか出来なかった。
嬉しいとか、恥ずかしいとか、そんなものじゃなくて。ただ、あたしには似合わない言葉に、どう反応していいのか分からなかった。

その、黒い瞳が嫌いだ。

真っ直ぐ見つめて、見取れるフリなんて要らないのに。
赤くなった自分が、こんなにも惨めじゃないか。

もっとふざけて言えば良いのに。いつもみたいに「可愛いね」って、不埒な笑みを浮かべながら言えば、軽く流せるのに。

「可愛い」

どうしてそんな顔で微笑うんだよ。
いつもそんな風に笑ったりしないくせに。

優しい眼なんて、見なければ良かった。


「……・黙ってよ、バカ」

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