‡一夏の思い出‡


「一つだけ、お願い事していい?」
「ん?なに?いいよ」

立ち止まり、言葉を紡ぐ
振り返って笑う紫杏

「一瞬だけでいいから、目を閉じて欲しいな」
「ん?こうか?」

立ち止まった瑠依に近づき
彼の言った言葉に従い瞳を閉じる
自分より少し高い彼女

そんな彼女の頬にまるでガラスを扱うように
優しく優しく両手で触れ
そのまま彼女の顔を引き寄せ





「好き。紫杏」




彼女に聞こえるか
聞こえないかくらいの小さな声で言葉を紡ぎ
静かに彼女の唇に自身のそれを重ねた



愛して、います



そんな思いが届くことを願って


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