‡一夏の思い出‡
紛れもない
彼の字で書かれた
彼の最期の言葉
「……っっば、かだ…お前、ほんと。馬鹿だよ…いい逃げなんかして」
ぽたぽたと
雫が頬を伝い
手紙に丸いシミをつくっていく
この手紙は昨日かかれたものだ
きっとあたしと別れてすぐ
瑠依と過ごしたあの日々は
嘘じゃなかった
彼は確かに
あそこに存在していたのだ。と
「この子、いつも紫杏さんの話をしていたんです
優しいくて明るくて強くてとてもいい人なんだ。って」
「・・・っ」
その言葉に
また涙が零れる
もっとはやく
気付けばよかった
彼の存在に
そしたら
もう少し
一緒に居れたかもしれないのに