‡一夏の思い出‡
机の上に問題集を広げ
先ほど机の横に書けた鞄から淡い緑色の筆箱を取り出し
その中から赤と青の二本のシンプルなシャーペンを取り出す
その片方をこちらに向いて座ったルイへと手渡した

触れた熱
男にしては細くて白い瑠依の指先から伝わる熱が
一瞬にして全身をめぐる

「数学。教えて」

ギュッと瑠依にシャーペンを握らせ
その手を自身の手で包み
ニコリと笑ってみせる

「え、あ…あのえっと、そのっ」

突然の彼女の言葉
包まれた手
彼女の笑顔

その全てにドキドキしてしまい
言葉が出ずあたふたしている瑠依に
紫杏は包んでいた手をパッと離し

「ほら、ここからっ」
「え…は、はい」

問一の問題を指差して言葉を紡ぐ
その言葉に瑠依はシャーペンをきちんと握り直してから答えた
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