‡一夏の思い出‡
瑠依が問題の横に式を書いてその説明をすれば
紫杏が解答を書く冊子に
その説明を聞きながら導き出された答えを書き込んでいく

時折教科書を開いて
そこに描かれている図で説明し
わからないと顔をしかめる紫杏に
何度も今期よく教えながら
穏やかに流れる時を過ごす

「そういやさ、瑠依はどうしてここに居たんだ?」
「ぇ…」

問題文に視線を向けたまま紫杏がふと問いかける
その問いかけに、瑠依ははっとなり
教科書に向けていた視線を
解答冊子に悩みながら答えを書き込んでいく紫杏へと向けた

「だって、瑠依は帰宅部だよな?
 だったら普通この夏休みにわざわざ学校来ないだろう」
「別に…ただ、ちょっと図書館で本を読みたくなっただけですよ
 深い意味はありません」

開いていた教科書のページに人差し指を挟み
読んでいた場所がわかるようにしてから手を下ろし
足と足の間にすっぽりと両手ごと納める

微笑を作って見せれば
彼女はそっか、と何の疑問も持たず
再び眉間に皺を寄せながら問題を解くことに集中した
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