‡一夏の思い出‡
その言葉に、一瞬
ほんの一瞬瑠依の動きが止まる
しかし、すぐに笑顔になり「僕でよければ」と言葉を返した
どこか硬いその笑顔に気付かないまま
紫杏は元気よく立ち上がり
「ありがとう」と満面の笑みを見せた
「やっば…もうこんな時間か
悪い瑠依。あたしそろそろクラブに戻ってくるっ」
時計に視線を移した紫杏が突然焦りだし
急いで机の上に出ている筆箱や教科書を鞄の中へと押し込んだ
それを手に持ち、あわただしく教室を出て行ってしまう
最後に「明日からよろしくな」と一言だけ残して
「相変わらず、あわただしい人だな」