エリート医師の溺愛処方箋
「千尋の嘘つき」
……え?
彼女が軽く俺を睨みながら小さな声で突然呟いた。
「え?何が…」
「……引き返せないところまで……
力ずくで奪うんじゃなかったの…?」
……!…え…。
「い…いや、あれは…」
「やっぱり気が変わったの?
…そうよね、さっき突然出会って、あの場の雰囲気で何となく…、なんてよくある話だわ。
大体、医局長ともあろう人が私なんて初めから相手にするはずないわよね。
私一人で舞い上がってバカみたいだわ。
…だけど…今日はあなたに祝ってもらえて良かった。
明日からまた頑張れそうな気がするの。
本当に…、ありがとう…
…………ございます、夏目医局長。
じゃあ、私、これで……」
彼女はペラペラとそこまで一気に話すと、フラフラと立ち上がった。