エリート医師の溺愛処方箋
―――。
「あら。深沢さん。
どうしたの、こんなところで。
誰かと待ち合わせ?」
職員通用口の自販機の横に隠れるように千尋を待っていた私は、赤木師長に声をかけられ曖昧に微笑んだ。
「早く帰らないと、暗くなるわよ」
「はい。お疲れ様でした」
…暗くなってもいい。
二人で歩くその姿を、誰にも見られないように、闇が覆い隠せばいい。
千尋は私を正面から真っ直ぐに求めてくれるけれど、受け止めて飛び込む勇気がない。
私が逃げ出したいのは、彼のキャリアからではない。
そんな風に考えてしまう自分自身からなんだ。
和志にも、誰にも認めてもらえなかった。自分からでさえも。
一瞬の一時で千尋が私を本気で欲しがる訳がない。