Chu-Lips
ザワザワッ…
クラスがざわつく中、伊津は涼しい顔して席につく。
『…すごい人が転入してきたね、柚ちゃん。……柚ちゃん?』
「………っ」
柚に話しかけてきたのは、前の席にいる澤口 佳菜子。
大人しい女の子。…と言っても、柚ほどではないが。
「そっ…そだね…っ」
佳菜子に、ぎこちない笑顔で返した柚。
今、柚には伊津がどれだけすごい人なのかとか、全く関係ないのだ。
これから始まる悲劇に、柚は身体を震わせていた。
どうしよう…っ
これから私、どうなるのっ…?
『じゃ、今日も授業に集中して受けろよ!以上!』
『起立!礼!』
『『ありがとうございましたー。』』
柚が震えている間に、いつの間にか終わったホームルーム。
『…柚ちゃん、先生から呼ばれてなかった?』
「えっ…!?ぁ、ぁあ…ありがとう…」
伊津が転入してきたことで動揺を隠せない柚は、佳菜子に指摘され、ゆっくりと井上先生の元へと向かった。