Chu-Lips
「きゃーーっ!」
ガララッ
奇声を上げて、彼女は直ぐに教室のドアを開けた。
「せっ…セーフ…?」
パコンッ
『森山、アウトー』
「いたっ…!」
授業に遅れた彼女と先生のやり取りに、教室中に笑いが沸き起こる。
『大体、2学期最初の課外で遅刻するヤツがおるか、バカ。』
「うっ…!」
鋭い視線を柚に送るのは、数学教師で柚の担任、井上先生。
アラサーの独身オヤジだ。
バカって…
皆にまた笑われ、涙目になりながら柚はゆっくりと席に着いた。
柚がさっき、必死に走っていた理由…
それは、早朝8時に始まる課外授業に遅れそうだったからだ。
いや、正しくは…遅れた、なのだが。