Chu-Lips
『王様じゃない、瑞季だ。瑞季と呼べ。』
「み、ずき…くん?」
『……そうだ。』
伊津は、柚に名前で呼べと言った。
高校生にもなって、“王様”と呼ばれるのはいくらなんでも恥ずかしすぎる。
少なくとも、名前で呼んでほしかった伊津。
君付けではあるが、まぁ仕方がないと自分に説得した。
『学校案内は、小柚がしてくれるよな?』
「えっ」
『なぁ?』
カシャンっ…
「っ……」
5年ぶりに再開し、2人の関係に少しの変化が訪れた。
それを知ってか知らずか、伊津に迫られた柚の頬に赤みが出る。
伊津はそれを一瞬たりとも見逃さなかった。
フッ……可愛い奴。
『小柚?』
「っ…ゎ、かった…」
伊津の口元に笑みが出る。
嬉しい。
その一言だが、変わらない柚の反応に、嬉しくもあった。