Chu-Lips



「聖花ちゃんは知らないだけなんだよ!大人は…自分の考えを変えようとは思わない…。自分が思ってることはすべて正しいって、思ってるものなの!特に、子供の前で、自分の考えを変えることなんてありえない。プライドがあるから。自分の非を認めたりなんてしない!」

『………』


初めてだった。

こんなにも感情に流されている柚は。


『柚…あんた……、』

「ごめん、聖花ちゃん…。今の、忘れて…?」

『………』


バツが悪そうな柚の顔。

そんな本音を聞いて、そんな苦しげな姿見せられて、忘れるなんて無理よ…。


「あまり言いたくなかったんだけどねっ…歯止め、効かなくて…ダメだね。」


この雰囲気を変えようと、無理に笑顔を作る柚。

お弁当を広げる柚を見ながら、聖花は思った。

今のあたしには、柚に何も言えない…――。

掛ける言葉が見つからない、と…。


「…それで、学校案内は、聖花ちゃんは付き添ってもらわなくていいからね。頑張るから、私!」


“ファイティン!”とガッツポーズをする柚に、苦笑いを返す聖花。


『ホントにいいの?それで。』

「…うんっ!」


柚の笑顔に、聖花はもうなにも言わないことにしたのだった。






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