Chu-Lips
「ぁ……っ」
『ったく、掃除場所の位置くらい教えて行けっての。』
「………」
開いた口が塞がらないとはこういうこと。
なぜここに瑞季がいるのか――…
柚には一切、理解できなかった。
『ゴホッ…!何だここ、窓くらい開けろよ…。』
ガラッ
制服の袖を鼻にあてて、空気を吸わないようにしながら、瑞季が窓を開ける。
そんな瑞季を、柚はただ茫然と見つめていた。
『…ん?何。』
「ぇ、ぁ……」
見つめすぎたのか、瑞季が柚のところへやってくる。
元々、瑞季は汚い所が嫌いだ。
そのため、幼い柚は瑞季の分の掃除もやらされていた。
そんな男がわざわざ自分から汚い所へやってくるなど……
柚にとっては、天と地が引っくり返るくらいの驚きがあった。