Chu-Lips



柚たちの教室に戻り、鞄を取ると、靴箱へと向かう。

その間、柚は不思議そうに瑞季を見ていた。


『……何なの、小柚。さっきから…。』

「へっ……」

『そんなに見つめなくたって、俺はここにいるっつの。』

「………」


いや、そうじゃなくて……っ

柚が見つめていた理由を、完全に誤解している瑞季。

靴を履き替え、柚は戸惑っていた。


私に瑞季くんの鞄、持たせないの…?


それは今まで瑞季が柚にやらせていたこと。

5年経った今でもそのことを引きずっている柚には、そう疑問に思っても仕方のないことだった。


「み、瑞季くんっ…」

『ん?』

「みっ、瑞季くん……鞄、いいの…っ?」

『は?』

「だって、鞄、自分で持ってる…!私に持たせ、…ないの…?」


俯いてそう言った柚に、瑞季は茫然とした。

これが、俺が小柚にした結果だと…。

自分が柚を苛めなければ、再会しても、こんな風に柚が自分を怖がらなかったかもしれないと、瑞季は思ったのだ。





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