Chu-Lips
◆悪魔の甘い罠
私のお隣さん
久しぶりの瑞季との下校。
これといった会話もなく、黙って2人は通学路を歩いていた。
そう言えば、瑞季くんの新しいお家はどこなんだろう…?
ごく自然に柚の前を歩く瑞季だが、歩いている先にあるのは柚が住んでいるマンション。
私はもうここでいいんだけど…もしかして瑞季くん、わざわざ私を送ってくれたのかな…?
そんな淡い期待を抱いてる柚に対し、
『変わんねぇな…ここ。』
「え…?え!?」
瑞季は柚のマンションの前まで来ると、至って普通にそのマンションの中へと入って行った。
え…何で!?
戸惑いを隠せない柚を余所にエントランスのセキュリティも住民用のカギで解除し、入って行く。
え…え…何で瑞季くんがここに住んでる人しか持ってない鍵を持ってるの…!?
ポーンっ
『…何突っ立ってんの?来いよ。』
「え…!?ちょっ」
ここは柚のマンションの筈なのだが、瑞季は柚よりも長くここに住んでいるような振る舞いだ。
もしかして、あれは私の…?
もしかして、盗まれた!?
と、思って鞄を漁るが、そこには確かに自分の鍵があった。
なぜ…。
ポーンっ
茫然としている間にエレベーターは7階に着いてしまった。