Chu-Lips
カチャッ
おずおずとチョークを取った柚は、教科書と解説を相互に見ながら、書いていく。
そんな柚を、井上先生は見守るように視線を送っていた。
うっ…見られてるよ…
だが、柚にとってそれは嫌な存在でしかなかった。
カチャ…
「で、出来ました…」
『ん。…ぉお、森山にしては頑張ったな。正解だ。』
「!!」
ぁ、当たった…!!
柚の書いた回答に、赤で丸がつけられる。
小さい頃から、この瞬間が大好きだった柚。
さっきとは裏腹に、嬉しそうな顔で自分の席に戻っていった。
『…じゃ、次のページ開けー。次はな、結構大事なとこで――…』
そのまま、授業は進んでいき、柚は寝ることもなく、課外を終えたのだった。