Chu-Lips
そして柚を悩ませるのは瑞季の分と渡されたお弁当。
転入してからの瑞季はより一層ファンを増やしていき、今やもう学園の王子様的存在にまでなっていた。
成績優秀、運動神経抜群、紳士的である上にレディーファーストの太鼓判まで押された瑞季の存在はあれよあれよと学校中で有名になって行ったのだ。
柚は淋しい、というよりも、やっぱり瑞季は大人らしくなったんだなと思っていた。
小学校の時から瑞季は人気者であったため、瑞季が有名になって行くことには何の気持ちも抱かなかったのだ。
でも、瑞季が紳士的でレディーファーストであるということにはすごく不満を感じていた。
他の女の子には紳士的でとても優しい瑞季だが、私が関わると途端に冷たくなる。
柚が面白くない、と思ってしまうのも無理はない。
ただでさえ自分にだけは優しくない瑞季。
学校では王子様とはやしたてられ、声をかけるのにも苦労をするほど。
そんな中、お弁当を渡す立場にもなってほしい。
自分は彼女でもなく、瑞季と幼馴染と言うわけでもなく、瑞季と仲良しというわけでもない自分が、人気者の彼に弁当を渡すということが、どれだけのリスクを抱えているということか。
瑞季も母も、分かっちゃくれない。