Chu-Lips
『了解!貸して?』
「…はい。」
『じゃ、私の鞄よろしく~!』
お弁当と引き換えに渡された佳菜子の鞄。
笑顔を零しながら教室へと入って行った佳菜子を見て、柚は複雑な気持ちになった。
今、自分がしていることは、人を利用していることだということ。
それは佳菜子にとっても瑞季にとっても失礼であるということも、分かっているから。
それでも、自分で私に行くことが出来ない柚。
そんな臆病な自分が、とても歯がゆく思えて仕方なくなってしまうのだった。
恐る恐る踏み入れた教室は酷く騒がしくて。
自分だけが場違いな気がしてならなくなる柚。
『どうしたの~?柚!哀しいことでもあった?』
「せ、ぃかちゃん…。」
『ん?おはよっ!』
そんな柚を気にかける唯一の存在、聖花。
『今日も渡せなかったん?』
「…うん…。」
ふと視界に入ったのは、瑞季と佳菜子が仲良く喋っている姿。
見ていられなくなった柚は、すぐにそこから視線をそらした。