Chu-Lips
聖花はもちろん、柚が中々お弁当を瑞季に渡せていないことを知っている。
なぜなら、柚が弁当探しを最初に頼んだのは聖花だったから。
でも、聖花には断られたのだ。
“あまりアイツには関わりたくない”という、直球な一言で。
『ふーん…全く、柚のお母さんも懲りないわね?』
「え…?」
『ぁ、ううん!何でもないのよ。』
「………。」
あまり触れちゃいけない話題だと思った柚は、あえて突っ込むことはしなかった。
「…なんか、楽しくないな…。」
柚は佳菜子の鞄を佳菜子の机の上に置きながら、ポツリと零した。
『え?』
「聖花ちゃんはさ…、バイトって…どう思う?」
『――はっ!?』
いきなり柚の口から“バイト”という単語が発せられ、朝から教室に響く大声を出した聖花。
そのため、クラス全員の視線が柚たちに集中した。