Chu-Lips
カツッ
『来るって何が?何が来るの?』
「分かんない…でも…人、かな…」
『人?』
カツッ
「うん…聖花ちゃんには聞こえないの!?この…ゆっくりと近づいてくる足音が…!」
『足音?・・・いや、聞こえないけど。』
いきなり様子を変えた柚に、ついていけない聖花。
カツッ
「なんで…?私だけ…?」
こんなにはっきり聞こえるのにっ…!
何で皆には聞こえないの!?
怖くて怖くて、唇を噛む柚。
怖いときに必ずやる、柚のクセだ。
カツッ
『ははっ…そんなの空耳だよ!実際、ほら…何も聞こえないしさっ』
「ううんっ!私には聞こえる!こんなにはっきりと…空耳なんて思えない!」
『柚……』
信じられない、とでも言いたそうな聖花だが、あまりに怯えている柚を目の前に何も言えなかった。