Chu-Lips


カツッ

『来るって何が?何が来るの?』

「分かんない…でも…人、かな…」

『人?』


カツッ

「うん…聖花ちゃんには聞こえないの!?この…ゆっくりと近づいてくる足音が…!」

『足音?・・・いや、聞こえないけど。』


いきなり様子を変えた柚に、ついていけない聖花。


カツッ

「なんで…?私だけ…?」


こんなにはっきり聞こえるのにっ…!

何で皆には聞こえないの!?

怖くて怖くて、唇を噛む柚。

怖いときに必ずやる、柚のクセだ。


カツッ

『ははっ…そんなの空耳だよ!実際、ほら…何も聞こえないしさっ』

「ううんっ!私には聞こえる!こんなにはっきりと…空耳なんて思えない!」

『柚……』


信じられない、とでも言いたそうな聖花だが、あまりに怯えている柚を目の前に何も言えなかった。




< 7 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop