Chu-Lips
「…ただいまー。」
久しぶりに1人で家に帰り、柚は少し淋しさを感じていた。
何でだろう、と疑問には思うが、そう深くまでは考えなかった。
ピリリリリッ
そんな時、家の固定電話が鳴った。
母は今、不在らしい。
ピッ
「はい、森山ですけど。」
『あ、柚~?おかえり!』
「ママ!」
相手は柚の母だった。
「あれ?ママ、どうしてこっちに?」
『柚の携帯に電話しても、出なかったからじゃない!』
「え?」
学校にいる間はサイレントモードにしている柚は、マナーモードを解除するのを忘れていたため、母からの電話にも気付かなかったのだ。
だから、敢え無く、柚の母は固定電話の方に電話したのだった。
「ご、ごめん。」
『うん、でね?今日はパパとママの結婚記念日じゃない?』
「あ…そうだっけ。」
忘れてた。
そうかそうか。
柚の両親は、記念日を大切にする方である。
…と言っても、正確には柚の母が、だが。