Chu-Lips
えー…
もうやだぁ~
柚は瑞季と関わることが、苦痛になってきていた。
学校以外で会えば、必ず瑞季は柚を苛めるからだ。
唯一、学校では瑞季は柚に話しかけようともしないので、柚にとっては、学校にいるときが一番安全なのだ。
私も連れてってよ、ママ…。
柚の母は、そんなことは全然知らない。
言っても信じないのだ。
“あの瑞季くんが、そんなことするわけがない”と、柚の話には耳も傾けないほどだ。
柚は5年前の記憶を思い出す。
今と同じように、瑞季に苛められた日々。
誰も相談相手がおらず、殻に閉じこもるしかなかったあの日々。
どんなに苦しかったか、
どんなに哀しかったか、
誰も分かっちゃくれない。
ただ、聞いてほしかった。
信じてほしかった。
外見だけで判断してほしくなかっただけなのに。
どうしてこうも、大人と言うものは自分の偏見だけで判断するのだろうか。
自分が1番正しいとは、限らないはずなのに。