Chu-Lips


『――小柚。』

「は、はい…っ?」

『俺に何か、言うことあるよな?』

「・・・え?」


い、言うこと?

瑞季が言うタイミングは、柚にとってはかなり唐突で。

だから、瑞季の言うことが理解できないことが多い。


『弁当。』

「――っ!!」

『何で直接俺に渡さない?』

「・・・っ」


気付いてたんだ…最初から。

瑞季はとっくの昔に気付いていた。

柚の母親から聞いていたのだ。

瑞季の弁当も作るから、お昼を用意しなくていいと。


瑞季は待っていたんだ。

柚が直接自分に弁当を渡してくることを。

それなのに、それを渡してきたのは柚の友達である澤口とかいう女だった。


その澤口とかいう女が自分に好意を寄せていると柚が知っていて、わざとそうしてるのかと考えたら、瑞季は憤りを感じた。

あの日、再会したあの夜。

自分は柚にちゃんと気持ちを伝えたはずなのに。

それをまだ、柚は分かっていないのだろうか、と。






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