Chu-Lips
こんなにも伝わらないのだろうか、自分の気持ちと言うものは。
相手にどうしても伝わってほしいというときに限って、伝わらない。
それが瑞季にとって、ものすごく辛かった。
『――柚。』
「っ…え、」
『俺はお前が好きだ。』
「・・・っ!」
柚の涙を拭いながら、瑞季はもう一度、自分の気持ちを伝える。
『俺がこんなにもお前を苛めてしまうのは…お前が好きだからなんだよ。柚。』
「……っ」
『好きで好きで、お前を前にすると優しくなんかできなくて。…いつもお前を苛めて泣かせた。ごめん。』
「……!」
瑞季からの初めての謝罪。
どうして、こんなときに謝るの。
謝られてしまったら、許すしかないじゃない。
もう、瑞季くんのことを悪くなんて、言えないじゃない。
『おれは柚が好きだ。…俺と、付き合ってくれないか?』
「・・・っ」
『お前が離れていくんじゃ、俺は日本に帰って来た意味がないんだよ。お願いだから、』
「もう意地悪しない?」
『…っ』
そう言った柚の瞳は、強く光っていて。
自分を信じようとしてくれていると、瑞季は思った。