Chu-Lips
瑞季は試したかったのだ。
自分の気持ちを打ち明けたのは良いものの、それを柚は本当に理解しているのかを。
自分が何故…日本に帰って来たのか、疑問に思うかを。
結果は見事に惨敗。
柚は理解するどころか、どんどん自分から去って行った。
お弁当は直接渡さない。
学校でチラリともこちらを見ない。
でも、帰り誘えばちゃんと一緒に帰る。
柚のことをどんなに思っていても、柚の考えることが全く読めず、瑞季は意気消沈していた。
そんな時、柚の母に言われたのだ。
『柚に引きは禁物。押して押して押しまくって落とすのよ!』と。
押すといっても、タイミングが必要だろう。
そんな時、柚の両親が家を空けた――…それが昨日だった。
柚の母の言うとおり、柚は押せば堕ちた。
堕ちる――というより、わかってくれた。
自分との未来を、考えてくれるようになった、と言った方が正しいだろう。
きっと今までの柚は、瑞季との未来なんて、ないに等しいと思っていたのだから――。