Chu-Lips



瑞季は試したかったのだ。

自分の気持ちを打ち明けたのは良いものの、それを柚は本当に理解しているのかを。

自分が何故…日本に帰って来たのか、疑問に思うかを。


結果は見事に惨敗。

柚は理解するどころか、どんどん自分から去って行った。


お弁当は直接渡さない。

学校でチラリともこちらを見ない。

でも、帰り誘えばちゃんと一緒に帰る。


柚のことをどんなに思っていても、柚の考えることが全く読めず、瑞季は意気消沈していた。

そんな時、柚の母に言われたのだ。

『柚に引きは禁物。押して押して押しまくって落とすのよ!』と。


押すといっても、タイミングが必要だろう。

そんな時、柚の両親が家を空けた――…それが昨日だった。


柚の母の言うとおり、柚は押せば堕ちた。

堕ちる――というより、わかってくれた。

自分との未来を、考えてくれるようになった、と言った方が正しいだろう。


きっと今までの柚は、瑞季との未来なんて、ないに等しいと思っていたのだから――。




< 91 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop