Chu-Lips



『柚…伊津のこと、嫌いなんじゃなかったの?』


伊津が転校してきたときは、あんなにもイヤそうにしてたのに――

親友として、柚が強引に瑞季の彼女にされたのではないかと、聖花は心配しているのだ。


「…嫌いじゃなくて、苦手だったの。瑞季くんって我が儘だし、意地悪だし、何考えてるか分かんないし…。だけど、だけどね、」

『うん?』

「好きだって…言われたの。愛してるって。」

『っ…!!』


柚の嬉しそうな表情に、聖花は何も言えなくなった。

なぜなら、そんな風に笑った柚など、見たことなかったからだ。

柚に、こんな表情させるなんて――…


「だから、信じてみようって、思ったんだ。瑞季くんの言葉も、気持ちも、信じてみようって。こんな私を好きだって、言ってくれる人、きっと瑞季くんだけだと思うから。」

『柚…。』


フッ…降参ね。

伊津のやつ…こんな可愛い仔、よく落としたもんだわ。


「・・・聖花ちゃん?」

『柚、おめでとう。』


柚の頭を撫で、お祝いの言葉を告げた聖花に、柚は今までにない笑顔を見せたのだった。





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