Chu-Lips
「行こうか、小柚。」
「あっ、うん!」
「あたしを忘れるなっつの!」
先にその沈黙を破ったのは瑞季だった。
柚に、今までに見たこともない甘い笑顔を向けている。
聖花の言葉は、一ミクロも届いていないようだ。
――そんなこんなで、ついた学食。
「何が美味しい?」
「んー…」
メニュー表を見ながら、瑞季の質問に首をかしげる柚。
あれもいいしこれもいいと、決められない様子。
相変わらずの優柔不断さに、瑞季は少し微笑んだ。
「やっぱり、日替わりランチでしょ。」
「あ、聖花ちゃんもそう思う?やっぱ結局は日替わりランチかなー。」
横から首を突っ込んだのは聖花だった。
今回だけは、聖花の性格に感謝した瑞季。
柚は一度悩むと決められないタイプであるため、こうやって一言柚をリードする人間が必要なのだ。
案外、この2人…いいコンビなんだな。
日替わりランチを3つ頼む柚の後ろ姿を見つめながら、そう思った瑞季だった。