断崖のアイ
「どうだ」

 部屋から出てきたブルーに、先ほどの男が声をかける。ブルーはそれを一瞥し、室内を窺える部屋に向かった。

 部屋に入り、ブルーは険しい表情で幼児を見下ろす。

「自分が生物兵器かどうかは知らないと言っていた」

「! 子どもの言葉を信じるのか」

「あいつはただのガキじゃあない」

 腕を組んで応えたブルーに眉をひそめた。

「で、どうなんだ。ガキの言葉よりお前の意見が聞きたい」

「……」

 背にしたガラスにちらりと視線を送る。

「あらゆるものを学び取る能力に優れている。鍛えれば言葉に見合った力を発揮するだろう」

「そうか」

 男の顔は喜びに歪んだ。生物兵器ではないと解れば責任を取らされる立場にある男にとって、ブルーの言葉は確実な安心を呼ぶものだった。
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