断崖のアイ
 同じ頃──3つの影が山間部にある施設を見下ろしていた。いずれもミリタリー装備に身を包み、険しい表情を浮かべている。

 男の1人は双眼鏡をのぞき込み、もう1人はライフルのスコープから施設内を窺っていた。そして最後の1人──その女は2人を眺めつつ腕を組み、施設全体を視界に捉えていた。

「本当にあそこにあるのか?」

 双眼鏡から顔を離し、女に尋ねる。

「あたしの情報は確かだよ」

 その男──ロイ──に発して鼻を鳴らした。ややハスキーな声に背中までの濃い栗色の髪を束ねてアップし、吊り上がった赤茶色の瞳は強気な性格を表している。

 20代後半と思われる女は左手首の時計を見やり、傾きかけた太陽を視界全体に捉えた。

「で、いつ決行だ」

 スコープから女に視線を向け、短く切った硬い黒髪をかき上げる。女は引き締まった体を揺らし、眼下の施設を見やった。

「一週間後ね」

 2人の男は無言で頷き、3人は木々の中に消えていった。
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