断崖のアイ
 数日後──その日の勉強を終え、部屋で本を読んでいたベリルの元をブルーは訪れた。

「人を殺すことをどう思う」

 唐突に問いかけられ、少しの驚きを瞳に見せる。

「あなた方が望むのなら」

「俺はお前の考えを訊いている」

 向けられた2つの小さな青空に視線を合わせず、顔を伏せた。

「よく、解りません」

 静かにそう発すると、愁いを帯びた瞳でブルーを見つめる。

「命とはなんなのでしょう」

 応えない男に薄く笑みを浮かべ、自分の手を見下ろした。

「どんなに学んでも、私の命の説明は見つからなかった」

「そうか」

 ベリルの頭をワシャワシャとなでたあと、小さく笑んで部屋から出て行く。そんな背中に眉をひそめた。
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