断崖のアイ
 さらに数日後──

「リエンナ、準備は出来ているか?」

 ロイが尋ねると、その女はニヤリと笑みを浮かべた。

 施設を見下ろすその場所には、以前の3人以外にも5人ほどの男が準備を進めていた。彼らはハンターだ、金でどんな依頼も受ける。

 リエンナと呼ばれた女性がリーダーだ。高額な依頼料を要求する代わりに、その腕は確かである。

 170㎝の体を揺らし、無表情に施設を見つめた。決行は夜間を計画している。かき集めたデータを元に『生物兵器』がいるであろう位置を推測し、迅速に行動しなくてはならない。

 肌寒い気配が山々を染めていく──視界は闇に奪われ、神経は研ぎ澄まされていく。足下からゆるゆると這い上がる不安と恐怖は、高揚感をも沸き立たせた。
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