断崖のアイ
「行け」

 ぶっきらぼうに言い放ち、ハンドガンを構えて遠のく。その後ろ姿に手を伸ばすが、声は出なかった。

 目を細め、振り切るようにブルーが指差した方へ足を向ける。

 あちこちで響く爆発音と叫び声が、起こっている現状のすさまじさを物語っていた。全体を見た訳ではないベリルだが足下から伝わる爆発の響きは、確実に施設を壊滅させるに足るものだと推測出来た。

 ベリルの進む方向は何故か一つの障害もなく、まるで見えない何かに誘導されるように難なく建物から出る事が出来た。

 建物を見上げると、重くのしかかるような暗い雲に炎が映り空が朱く染まっていた。

「!」

 背後に気配を感じて振り返る。

 そこには、ライフルを構えた女と男2人が怪訝な表情を浮かべて立っていた。服装からして施設の人間とも、軍の人間とも違う。
< 129 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop