断崖のアイ
◆第6章~無数の手

*敵わぬ祈り

 ユーリは、組んでいた手に力を込める。その表情には、嫌悪とも気鬱ともとれるものが浮かんでいた。

「彼は何故そのようなことを……」

「私に知るよしもない」

 伏せられた瞳には何も映し出されておらず、その身に起こった出来事だというのにまるで他人事のようにベリルはただ、淡々としていた。

「ハンターたちと行動を共にしたのですか?」

「私を引き取ったのはリエンナだよ」

 少しの苦笑いにユーリは小首をかしげた。

 リエンナは何も言わず、何も尋ねずにベリルを引き取り処世術をたたき込んだ。処世術とは言っても、彼らハンターの世界のもので一般的な社会とは異なる。
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