断崖のアイ
「!」

 ふいにベリルが立ち止まり、青年は怪訝な表情を浮かべて彼を見下ろした。苦々しい顔が背後からちらりと見え、小さく舌打ちが耳に届く。

 何かあったのだろうか? 珍しく苛立っているような彼の素振りに小首をかしげた。

「ここで待て」

「! ……?」

 自然公園に向かうベリルの背中を見つめる。

 青年は素直に従う気はなかった。何故なら、とても嫌な感覚が胸を這い回っていたからだ。本当に喉が渇いている訳でもないのに喉の渇きを覚え、舌のざらつきが神経を逆なでするように気分が悪い。

 ロッドの重みを確認し、ベリルのあとを追った。
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