断崖のアイ
「ベリル!」

 聞き慣れた声に振り返ると、青年が驚きの表情で立っていた。それにまた、ベリルは口の中で舌打ちをする。

「あら、ついて来ちゃったみたいよ。困った坊やね」

 女の物言いにユーリは眉をひそめた。

 赤毛の女は短く切った髪をいじり、得意げに青年を見やる。右手に持っている黒い塊は、その威力を示すように太い銃口をゆらゆと揺らしていた。

 ベリルを取り囲んでいる男たちの手にも、それぞれ威力の高いハンドガンが握られている。

 手足に当たれば相当なダメージを受けるどころか、普通の人間なら胴体に当たれば確実に死ぬだろう。

 そんなものを使用する彼らに、ユーリは嫌悪感を表情に示した。

「私たちにはどうでもいいわ」

 女が笑って発すると、囲んでいた3人の男たちは一斉に武器を構えベリルに引鉄(ひきがね)を絞る。

 消音器(サイレンサー)が無駄と思えるほどの破裂音が雑木林にこだまするが、ベリルに当たる気配は無かった。
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