断崖のアイ
「やめろ! うっ!?」

 駆け寄ろうとしたユーリに、1人の男が攻撃をかける。

 いくつかの攻撃はしのいだが、鈍器と化した黒い塊は容赦なく青年の体に叩き込まれ地面に転がった。

「どうする」

 倒れ込んでいるユーリに男が視線を送ると、女は鼻を鳴らす。

「放っておきな」

 意識を失っているベリルを男に担がせて、痛みで動けないユーリに口の端を吊り上げた。

「じゃあね」

「ま、待て……っ!」

 例え人工的に造られた者であっても痛みは変わらないというのに、わたしはなんという浅はかな! ──重い痛みは、手を伸ばすユーリの意識を遠ざけていった。
< 141 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop