断崖のアイ
「わ、わたしも──行きます」

「いつまで俺たちの邪魔をするつもりだ」

 彼の声に怒りが込められている事がよく窺えた。しかし、従う訳にはいかない。

「わたしのせいならば、責任を取らなくては」

「いい加減にしろよ」

 痛みに耐えて立ち上がった青年に、泉はさらに声を低くした。その胸ぐらを掴み、勢いよく背中を木に押しつける。

 小さく唸ったユーリを意に介さず、威圧的に見下ろした。

「奴が共に過ごすことを許しただけでもキサマを殺してやりたいというのに」

 かけられた言葉に目を見開く。

「今まで一度として許した事は無かった」

 それでもまだ不満か──彼の言動から伝わる怒りに、青年は眉を寄せた。明確な嫉妬の目が注がれている。
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