断崖のアイ
 突き刺さる妬みの視線、彼の感情はユーリが見て取れるほど異常だと解る。

「あなたは……っどうして神父に」

「貴様に話す義務は無い」

 乱暴に突き放して歩き出す泉の後ろを追うと、公園の端に黒いワゴンが駐まっていた。

 ドアを開いた泉の背中越しに覗くと、運転席の青年がこちらを見て微笑んだ。愛想笑いをした運転席の青年に、泉は軽く睨みを利かせる。

「イズミ神父!」

「だから俺は神父じゃないと……」

 ドアを閉めようとした泉に、声を張り上げ反応させた。

「いいんじゃない? こんなことしてる暇は無いでしょ」

 運転席の青年はニコリと言い放ち、泉はそれに舌打ちする。

 後部座席のドアが開き、ユーリが乗り込むと車はゆっくり発進した。車内の雰囲気は当然のごとく重たい──運転席の20代後半だと思われる青年は、バックミラーでユーリを確認すると小さく笑った。
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