断崖のアイ
「余計な事は言うな」

 舌打ちと共に泉が発する。彼の態度に慣れた様子で、カーティスは再びバックミラーを一瞥した。

「あんた、頭良さそうだよね。オレのことはデータ見た?」

「15歳の時に両親が交通事故で他界し、そのあとあなたを引き取った叔父が神父だったことでこの世界にと──」

「そう、親父が海軍でね」

 武器の扱いを父親から学んでいたカーティスは、神父の叔父によって信仰の道に進みつつ、その腕を買われ裏ヴァチカンの門をくぐった。

「じゃあイズミのこともデータ見たんだろ」

「……5歳で両親と渡米し、同じく両親を事故で亡くし、親類のいない彼はそのあとはハーレムとスラムを行き来して、スラムで聖書を読み聞かせていた神父により──」

「やめろ」

 語気を荒げた泉にちらりと視線を向けたあと、カーティスはまた唇の端を吊り上げる。
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