断崖のアイ
「他の2人のデータを見たなら気がついただろうけど。あんたのような人間は、むしろ裏ヴァチカンには少ないのさ」

 それに、ユーリは眉を寄せて外に視線を向けた。

「そうでなければならない理由も、あんたにはすでに解ってるはずだ」

「……」

 強い信仰心と、すさんだ心を持っていた過去──それが闘う原動力であり、人間としての弱い部分を取り払う事が出来る。

 躊躇(ためら)いは腕を鈍らせ、自身を危険にさらす。

「今までと違う方法でベリルを捕らえようと思ったのかもね」

 成功とまではいかなかったようだけど、失敗でもないね……と、つぶやいたカーティスの横顔をユーリは見やった。

 穏やかな物言いだが、どこかしらに棘があるようにも思える。

 自分の立場を考えれば、それも無理もない……ユーリは目を伏せ、喉を詰まらせた。
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