断崖のアイ
「報酬をいただこうか」

　そんな女の声を耳にして、ベリルは静かに目を覚ました。

　豪華な装飾の施された黒い鉄格子の向こうには、見知った４人がいて、その周囲を数人の男性が取り囲んでいた。

「そうですね」

　そして、彼らの前にはひときわ居丈高（いたけだか）にものを言う男が、腕を組んで口角を吊り上げていた。

　ネイビーカラーのスーツに身を包み、灰緑色の髪と漆黒の瞳を女に向ける。

　軽く手を挙げれば、周りにいる男たちが４人に向かって一斉にライフルを構えた。

「!?」

「どういうつもりだい」

　女は低く問いかける。

「いえね、丁度、生け贄が欲しかったところなんですよ」

　さらりと告げて周りの男たちに視線を流した──

「よせ！」

　鉄格子の向こうから響いた声に、思わず一同が反応する。その隙を女は見逃さなかった。

　仲間の１人にすかさず視線を向けると、その男は装備していた深緑色の塊を掴んで金属のピンを抜き床に落とす。
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