断崖のアイ
 ジンバブエに向かうユーリたちの飛行機──

「いいかい?」

「! はい」

 外を眺めていたユーリの隣にカーティスは腰掛けた。

「あんたから見れば、イズミはゴミみたいなもんだろうね」

「そんなことは……っ」

「実際のスラムとハーレムを見ても、そう言えるとは思えないけどね。あんた自身はいまそう考えていても、現実を見れば変わる。そういうものさ」

 苦い表情を浮かべるユーリに笑みを見せて続ける。

「日本人てのは骨格がオレたちより細いから、割と人気があるんだ」

「!」

「あいつはそうやってスラムのボスに気に入られてた」

 前方のシートにちらりと覗く泉の頭に指を差す。

「生き残るには何でもする。しなきゃならない」

「もう充分です」

 顔を背けて言葉を止める。
< 155 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop