断崖のアイ
「そんなんじゃベリルの話は聞けないな」

 ユーリは思わずそれに視線を合わせた。

「人間は死ぬ。だからある程度の無茶はしないものだけど、ベリルはそうじゃない」

 不死に与えられる痛みは想像を絶するものだ。

「首を切り離されたこともあったんだよ」

「……っやめてください」

「もちろん、麻酔はかけられていたけどね。どっちが再生したと思う?」

「それ以上は……お願い、します」

 血の気の引いた顔を窓に向けた。

「スラムで聞いた聖書の言葉は、あいつには救いだったんだろう」

「!」

「ま、そのときの戦闘技術を裏ヴァチカンに買われたワケだけど。当時のイズミは妄信的だった」

 神のためという名目に、命じられるがまま対象を捕らえる日々──そんな泉にベリルを捕らえる命が下ったのは至極、当然だったろう。
< 156 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop