断崖のアイ
「奴にとっては、現実に神に触れられる存在がベリルだ」

 届かない存在が、目の前にいる影から垣間見える。

「歓喜しただろうね」

「……」

「あいつの性癖はスラムで確立したものだけど、ベリルに対する異常な執心振りも理解出来るだろ」

「そう、ですね」

「あんたを憎む理由もね」

「!」

 膝の上に乗せた拳を強く握り、険しい表情を浮かべた。

「確かに……彼から見れば、わたしは裕福に生きてきた人間でしょう」

 喉を詰まらせ、それでも絞り出す。

「だからといって、それがいがみ合う理由にはなりません」

「それプラス、嫉妬もあるけどね」

 複雑な表情を見せたユーリにケタケタと笑ったあと、表情を戻した。
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