断崖のアイ
ナフタリは何も返さないベリルを見下ろし、ゆっくりと口を開く──
「我ら悪魔崇拝者(サタニスト)は、あなたを我が主ルシファー・サタンのものと正式に認めています」
注がれた言葉に鋭い視線を向けるが、男はさしたる反応も示さず遠ざかった。しかしふと立ち止まり、眉を寄せる。
神が未だ迎えをよこさない事は疑問に感じている。何故、現世に留めている──人間界で試練を与え、魂を高位に導くためか? だが、彼の魂はすでに高位にあると言ってもいい。
彼の意思が関係しているのかもしれないな。人間界への執着が強いと、いくら神でもそれに逆らい天界へ連れて行く事は出来ないと謂われている。