断崖のアイ
 ベリルは、静かに黒い縦縞を見つめる。

 同じ色で塗られている金属のツタが、豪華に鉄格子を飾っていた。それは特別であるという証なのだろう──本来、閉じこめておくものに必要はない。

 ゆっくりと立ち上がり、鉄格子に近寄る。

 監視している2人の青年は、動きのあったベリルに視線を留めた。

「善し悪しを決めるのは私ではない。私に応える術(すべ)はない」

「?」

 2人はどこともなしに発したベリルに眉を寄せ、装備している武器を確認するように手に触れる。

「例え──」

 それは無駄な事だと言われても、

「抗ってみるか」

 それが可能ならば──ベリルは、ツタの葉に右手の平を押しつける。驚く2人を一瞥し、尖った先端を押しつけたまま力の限りに引いた。
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